速度A 

(P32.以下{ }内はNewton別冊「わかる時空」よりの引用) 

「わかる時空」への反論目次

相対論の主張

{速度は見る立場によって変わる}

T この章の矛盾

{速度は見る立場によって変わる}という主張なのに、地球の自転や公転や銀河群の速度は決まっていると述べている。

 地球上に見る立場を設定すると、自転は止まり、太陽が動くはずではないのだろうか。

 この問題について考える。

 

1 アインシュタインの主張

{宇宙の中で,真に静止しているもの,つまり“運動の絶対的な見る立場”になるものは,なさそうです。

 実際,アインシュタインは,運動の絶対的な見る立場の存在,すなわちニュートンの絶対空間の考え方を否定しています。絶対的な見る立場がないわけですから、物体の“絶対的な速度”(絶対的な見る立場から見た速度)もまた決めることはできません。結局,物の速度とは,見る立場によって変わるもの(相対的なもの)なのです。

問題1 地球の自転速度の決め方

{宇宙の中で,真に静止しているもの,つまり“運動の絶対的な見る立場”になるものは,なさそうです。}

 この根拠となる事例に以下のことが述べられている。

事例

 赤道上を時速100kmで進む車を設定している。

{このとき私たちは,「地上で静止した人から見て時速100キロ」ということを暗黙のうちに仮定しています。しかし地球は自転しています。赤道での自転速度は、西から東へ時速1670キロです。地球の自転の影響を受けない宇宙空間から見れば、車は、西から東へ時速1770キロ(100+1670)で、運動していることになります。}

考察1 

 そこで、この車や、地球の自転の速度について、アインシュタインの主張に沿って考えてみる。すなわち運動の絶対的な見る立場はないという考え方である。

 

(1) {速度は見る立場によって変わる}として考えてみる。

 

ア 見る立場1 {地球の自転の影響を受けない宇宙空間から見れば}

 これがこの本に書いている{見る立場}である。このとき地球の自転速度は1670キロになると書いてある。

 そうだろうか。{地球の自転の影響を受けない宇宙空間}というのは非常にあいまいな{見る立場}である。相対性理論ではそのような宇宙空間はさまざまに存在するはずである。なぜなら{ニュートンの絶対空間の考え方を否定してい}るからだ。その中で、地球の自転速度が、西から東へ時速1670キロになる{見る立場}とはどのようなものか考えてみる。それは、地球中心に対して静止(いつも同じ位置にある)している{見る立場}である。この見る立場は地球と共に太陽を回り、銀河を回り、その他の複雑な運動をしている地球と同じ複雑な螺旋運動をしながら宇宙を飛んでいることになる。この見る立場から見るときのみ地球の自転速度が、西から東へ時速1670キロになる。この{見る立場}は非常に特殊な{見る立場}であることがいえる。もちろんこの宇宙に地球といっしょに螺旋運動をしてくれる{宇宙空間}など存在しない。

 

 地球中心に対して動いている{見る立場}では、地球の自転速度は1670キロにはならない。以下にそれについて述べてみる。

 

イ 見る立場2 (赤道上で地表に対して止まっている人を{見る立場}にする)

 車は、時速100キロになる。自転速度は0キロになる。これは、ガリレオ以前の人々が考えていた、地球は静止して、太陽や星が動いているという天動説と同じ結果になる。

(注:この場合、太陽は東から昇り西に沈む。太陽の時速は、太陽までの距離(8分光年)×2π÷24になる。おおよそ時速3768万キロ、秒速では約10000キロになる。また、星の速度になると、一番近い星でも4光年の距離にあるので、この星が1日で地球上の見る立場2の人を1周するのだから軽く光速を突破する)

 ガリレオまでこの{見る立場}が唯一絶対だとされていた。

ウ 見る立場3 (車と同方向に、地表に対し時速100キロで走っている第2の車に乗っている人を{見る立場}にする)

 車は時速0キロ、地球は時速100キロで、東から西に自転する。

エ 見る立場4 (赤道上空の静止衛星を{見る立場}にする)

 車は時速100キロで西から東に走っている。地球の自転速度は0キロで静止している。

オ 見る立場5 (赤道上空を地表に対して東から西に時速1000キロで飛ぶ飛行機を{見る立場}にする)

 車の速度は、時速1100キロで西から東に進む。地球は西から東に時速1000キロで自転している。

カ その他

 {見る立場}は無数に存在するから、見る立場の速度によって地球の自転速度は無数に存在することになる。

(2) 結論

  相対性理論では{物の速度とは,見る立場によって変わるもの(相対的なもの)なのです。}とあるから、見る立場をどこに取るかで物の速度はこのように極端に変わることになる。決して、地球の自転速度は、1670キロと限定することはできないはずである。相対性理論だと、地球は自転を止めたり、反対に回ったりするはずである。しかし、相対性理論の理屈ではそうなっても、残念ながら地球の自転が止まったり、反対に回ったり、また太陽が地球の周りを回ったりする事実はない。この本では{しかし地球は自転しています。赤道での自転速度は、西から東へ時速1670キロです。}と無数にある見る立場の中のたった一つを限定して決め、それに対して地球の自転速度を決めているのは、見る立場は決まっているという、ニュートンの考え方と基本的に同じである。

 この本の相対性理論家も地球の自転速度は決まっていると認めている。矛盾である。

  

3 考察2 地球の公転速度の決め方

  地球の公転速度を決めるには、上と同じように、地球の自転の影響を受けていないだけではなく、地球の公転の影響を受けていない宇宙空間、が{見る立場}になる。すると、地球は太陽のまわりを時速約10万7000キロメートルで公転することになる。

  しかし、ここでも、{物の速度とは,見る立場によって変わるもの(相対的なもの)なのです。}から他の{見る立場}を考える必要が出てくる。すると、月から見た場合、とか、火星から見た場合とか、地球上の人から見た場合とか、列車に乗っている人から見た場合、とか、宇宙ロケットから見た場合とか、様々な{見る立場}(無限に存在する)が存在し、それに対して、地球の公転速度は様々な値(やはり無限にある)を取ることになるはずである。決して、地球は太陽のまわりを時速約10万7000キロメートルで公転する、と決められなくなるはずである。

 相対性理論が正しいとするならば、地球が時速約10万7000キロメートルで公転するのは、太陽の中心に対して静止している立場のもののみに成り立つ速度である。これは非常に特殊な立場であるのは2考察1に書いたとおりである。

 

4 考察3 局部銀河群の動き

{「局部銀河群」全体も、ほかの銀河団(銀河の大集団)に対して運動しています}とあるが、これも、{見る立場}を地球上に取れば、銀河団が、地球に対して運動してきていることになるはずである。

  銀河団の中心に対して静止している{見る立場}に対したときのみ、初めて、局部銀河群が銀河団に対して運動していることになるはずである。

  すると、局部銀河群の運動速度も、決められないということになるはずである。

 5 速度の足し算


 すべての速度は決められないということだから、速度の足し算はできないことになる。

6 この本の主張の矛盾

 地球の自転速度を決めている。地球の公転速度を決めている。局部銀河団の速度を決めている(局部銀河群が銀河団に対して動いているとしている)。等、速度を決めているのは相対性理論に違反する。相対性理論は{物の速度とは,見る立場によって変わるもの(相対的なもの)なのです}から、自転速度も公転速度も見る立場によって変わるため決められないはずである。

7 運動の絶対的な見る立場

 この本では、自転速度を決める見る立場を{地球の自転の影響を受けない宇宙空間}としている。

 このことから、公転速度を決めるには、地球の公転の影響を受けない宇宙空間ということになる。そして、銀河群の速度は、銀河群の影響を受けていない宇宙空間ということになり、銀河団の動きは、銀河団の影響を受けていない宇宙空間ということになる。この先を書いていないが、これを突き詰めていくと、最後は、すべての宇宙の物質の動きに影響されない宇宙空間ということになる。これは、ニュートンの絶対空間である。ここから測ると、宇宙の巨大構造も、銀河団の動きも、銀河群の動きも、銀河系の動きも、太陽の動きも、地球の公転も、地球の自転も、車の動きも、すべて、決まった値になる。そして、すべては足し算できる。すなわち、車の絶対速度が足し算で出るのである。

 

結論

 車の速度を足し算していることはそもそも、絶対速度を認めていることになる。

 足し算を途中でやめたのは、最後まで行くと、絶対空間に行き着いてしまうからである。最後まで行くと、ちゃんと足し算でき、車の絶対速度が出るのである。そうなっては困るから途中であいまいにしているのであろう。

 

8 どちらが動いているか決まっている例

(1) 星の生まれる現場の写真から 

 貴誌、ニュートン2011、1月号に、銀河系内の星形成領域「NGC3603」の写真が載っている。その写真には、星団と、それから離れた所にある星間雲の写真が掲載されている。

 この写真について考える。

 これは、出来立ての星からの紫外線で、星間雲が吹き飛ばされている現場である。現在、星は星間雲の中で集団で生まれ、生まれた星の紫外線で、集まっていた星間雲が吹き飛ばされる、というのが、標準的な考え方である。

 すると、動いているのは、星間雲で、星ではなくなる。ところが、アインシュタインの理屈では{速度は見る立場によって変わる}のであるから、見る立場の取り方で動いているほうが変わるはずである。以下にそれを見てみよう。

@ 星を見る立場にする

星は動かず、星間雲が動く。

A 星間雲の中のある特定の分子を見る立場にする。

 星間雲分子は動かず、星が動く。

 これのどちらも正しいとするのが、相対性理論である。もちろん、ニュートンの理論では、動くのは絶対空間に対する決まった動きになる。星も星間雲分子も共に絶対速度で動いている。

 そこで、どちらがより、事実に符号するか考えて見る。

 動かすエネルギーは星の放射する紫外線であると考えられている。

そこで、その紫外線で星が動くか考えてみる。紫外線のエネルギーは星を動かすほどの力はない。また、星から出る紫外線は、全方向に放射されているから、一方向に星が動くことは考えられない。これは近くの恒星、太陽を観測すればわかる。太陽は、自ら出している紫外線や、恒星風で動いているという観測はなされていない。

 一方、星間雲は分子でできているから紫外線によって動かされるといわれている。また、星から放射されている紫外線に当たるのだから、一方から当たることになり、星と反対の方向に動くことになる。

 以上のことから、動いているのは、星間雲のほうであるということがいえる。{見る立場によって}動いているほうが星に変わるということはありえない。どちらが動くか決まっている例である。

(2) 系外惑星 

 系外惑星を探すとき、恒星がその恒星の惑星の公転のために揺れることを利用している。その揺れを恒星が出す光の赤方偏移で測り、惑星の有無を見つけるとされている。実際この方法で系外惑星が発見されている。

 相対論で考えると、見る立場の取り方で、恒星が揺れたり、地球が揺れたりする。(注:この揺れはケプラーの法則では楕円運動である)

 そこで、このとき揺れているのは恒星か、地球かを考えてみる。

 地球を{見る立場}にすると恒星が揺れている。しかし、恒星を{見る立場}にすると地球が揺れているように地球の赤方偏移の変化が観測されるはずだ。

 相対性理論によると、このことから、{見る立場}を変えると、動いているほうが変わるといえそうである。

 そこで考えてみる。恒星の揺れは、その恒星の惑星の公転によって生じている。ケプラーの法則である。では、恒星を{見る立場}にしたときの地球の揺れは何から生じているのだろう。ニュートンの運動の法則によると力が加わらないのに揺れることはない。恒星の光の赤方偏移は、恒星の惑星の公転運動から生じているということである。するとその恒星の惑星の公転によって遠く離れた地球が揺れていることになる。それはニュートンの法則にもケプラーの法則にもあてはまらない。

 相対性理論が正しいとすると、恒星を{見る立場}にすると、恒星を公転する惑星の万有引力によって遠く離れた地球が楕円運動をするということになる。新たな運動力学が必要である。

 実際の現象は恒星が楕円運動をしているのである。{見る立場}を変えても楕円運動をしているのは恒星のほうである。決して地球はその恒星の惑星の公転によって揺れることはない。

 恒星の動きは{見る立場}を変えても変わらない。動きは決まっている例である。

 

 (3) 車

 前掲の自動車を考えてみる。

 車から見れば景色が動いている。外に立っている人から見れば、車が動いているということになる。どちらも同じであるというのが相対性理論だが、そんなことはない。車が動きだすのか、それとも車の下の道路が地球と共に車と反対方向に動きだすのかは、同等ではない。車のエンジンのエネルギーでは、車を動かすことはできても地球を動かすことはできない。景色が動いているように見えるのは錯視にしかすぎない。

 もし、車のエンジンのエネルギーで、地球を動かすことができるというなら、ニュートンの運動エネルギーの法則を完全に否定しなくてはならない。

(4) 動きが決まっている実験

 まず東京で、二つのばねばかりと、10キロの錘を2個用意する。

 はかりに二つの錘を交互に載せて、同じ10キロの値を示すことを確認する。この一方のはかりと、錘を赤道上に持っていく。計ると,10キロより軽い値が出る。これは地球の自転による遠心力のために起こる。

 そこで、この双方のはかりを、赤道上の、静止衛星から観測する。静止衛星が{見る立場}になるので地球の自転は止まる。ところが、このとき、赤道上のはかりは、10キロより軽い値を示したままである。東京のはかりも、10キロを示したままである。静止衛星から見たとき地球の自転は止まっているのだから、遠心力は働かなくなるはずである。したがって、赤道上のはかりも東京のはかりも、10キロより重い値を指すはずである。

 このとき、{見る立場}が変わったのに、はかりの値が変わらないのは、それぞれの錘に遠心力が働いているからであると推測できる。そして値が変わらないということは、地球の自転速度が{見る立場}を変えても変わらないということを表している。

 {見る立場}を変えても、地球の自転速度は変化しないということになり、{物の速度とは,見る立場によって変わるもの(相対的なもの)なのです。}という考え方が間違っていることを示すことになる。

 これは私の思考実験であるから、実際に、静止衛星から、二つのはかりの目盛りを読んだら、共に、同じ値で、10キロより重い値を示すかもしれない。そんなことはないだろうと思うが、実験してもいいのじゃないだろうか。そうすれば、{物の速度とは,見る立場によって変わるもの(相対的なもの)なのです。}ということの証明実験になると思われる。まあ、そんな実験をする相対性理論家はいないだろうが。困っちゃうからね。

(5)身近な例(ジェットコースター)

 ジェットコースターを考える。ジェットコースターは、出発点は高い位置にあり、位置エネルギーを持っている。出発すると、斜面を降りながら、位置エネルギーを、運動エネルギーに変えることで、速度を増す。登りになると、運動エネルギーを位置エネルギーに変えながら登る。そのぶん速度は落ちる。このとき、運動エネルギーと、位置エネルギーは摩擦で失われた分を差し引くと等しくなる。

 これは、レールを{見る立場}にしたときの、運動エネルギーと、位置エネルギーの考え方である。

 では{見る立場によって変わるもの(相対的なもの)なのです。}という観点から、今度は、車体を{見る立場}にして考えてみる。

 すると、動くのは、車体ではなくレールになる。

 出発すると、車体は静止していて、レールが、車体に向かって登ってくる。このときの、レールを動かしているエネルギーは何なのだろう。位置エネルギーではない。位置エネルギーは下がるときに、運動エネルギーに変わり登るときに、吸収する。レールは登っているのだから、運動エネルギーを吸収するはずである。(注:地球ごと登っているのだから、位置エネルギーは生じない)

 なんにしろ、レールが動くというときのエネルギーの出所はない。

 では、登りになったときはどうなるだろう。今度は、レールが下がってくるように見える。すると、レールの位置エネルギーが運動エネルギーに変わり、どんどん加速するはずである。ところが、レールはしだいにゆっくりになる。反対である。

 相対性理論ではこの現象をどのように説明するのだろうか。

 このときの位置エネルギーは、9.8×地球の質量×高さ、でいいのだろうか。計算式はどうなるのだろう。車体が動くときは、9.8×車体の質量×高さである。すると{見る立場によって変わるもの(相対的なもの)}とすると、立場によって、エネルギーが極端に変化してしまう。ニュートンの発見したエネルギーの法則はこの場合完全に通用しなくなる。

結論

 この宇宙に、どちらが動いているか分からない星や銀河の運動は存在しない。もちろん、地球上のジェットコースターの動きもどちらが動いているか決まっている。相対的なのは見かけだけの速度で、実際の速度は絶対的なものであるといえる。見かけも事実であるというなら、天動説も、手品も事実になる。鳩はハンカチから生まれる、ということになってしまう。